【WIRED創刊編集長】ケヴィン・ケリー(著)『5000日後の世界』の感想/要約/書評【AR拡張現実ミラーワールド】
みなさん、こんにちは。
今日はケヴィン・ケリー(著)『5000日後の世界』についてご紹介します。
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【WIRED創刊編集長】ケヴィン・ケリー(著)『5000日後の世界』の感想/要約/書評【AR拡張現実ミラーワールド】
本書をざっくり紹介すると
雑誌「WIRED」創刊編集長を務め、インターネット黎明期からシリコンバレーの盛衰を見つめてきた著者。
GAFAなどの巨大テクノロジー企業による「勝者総取り」現象や、フリーミアム経済の到来など、テクノロジーによって引き起こされる多くの変化を予測、的中させてきた知見から、しばしば「ビジョナリー(予見者)」とも称される。
そんな著者への2019年からコロナ禍を跨ぐ2021年にかけてのロングインタビューを書籍化したものです。
インターネットの出現からSNSの出現まで5000日、そしてSNSの発展から5000日が経過した今日、これからの5000日の未来はどうなるのか、「テクノロジーに耳を傾ければ未来がわかる」という著者の思考法と、著者が注目する未来のテクノロジー動向を理解することができる一冊です。
キーワードは「ミラーワールド」ですね!
本書に書いてあること
ミラーワールドが起こす大きな変化
「ミラーワールド」とはイエール大学のデビッド・ガランダー教授が最初に広めた言葉です。
- ミラーワールドはAR(拡張現実)の世界
- 映画「レディ・プレイヤー1」に出てくるような、現実世界の上にバーチャルな世界が覆い被さるようなイメージ
- スマートグラスを代表としたウェアラブルデバイスの発展に伴い、働き方から日常生活まで、ARが溶け込んだミラーワールドが実現する
- ミラーワールドでは全てがAIと接続されていて、これはインターネット、SNSに代わる第3のプラットフォーム(世界)となる
- ミラーワールドの到来をビジネス視点から見た際、勝者となるのはGAFAMのいずれでもない、ARの会社となる。ソーシャルメディアの外にある、まだ名前も知られていない会社になる
著者はスマートグラスの一般普及について、今後25年以内、それまでは産業やゲームでの用途に限られる、と言っています。
ミラーワールドの到来によりまったく新しい働き方が生まれる
- ミラーワールドでは物理的な制約、情報共有の制約がなくなることで、今はない新しい組織の形ができる
- 非営利企業のような成長のしかたをする、自分のやりたいことに合わせた、会社とは別の形態としての選択肢となる
最近よく耳にするDAO(分散自立型組織)のようなニュアンスですね
これから50年間はAIの時代が続く
- 現在は「AIの時代」の最初の段階。 今後50年間続く。今後100年で考えると、「新生物学的な時代」が来る
- 「AIに仕事を奪われるクリエイティブでない人間はどうすれば良いのか」という議論はそもそも間違い。AIに適応できない人間などいない、予算をかけてコミュニティが支援し、アイデンティティから変えていくべき
- 汎用AIは存在しえない、今後もAIは人間には及ばない 。これから作られる AI もそれぞれが単機能のものになる。
- AI が生み出す変化で想像することが難しいのは、思ってもみないような副次的効果である
ガーファ後の世界
- 25年以内にガーファの代替わりが起きる
- 今後はデータを統治し管理する、データ取次会社のようなものが出てくる
- AI の社会ではデータがなくては商売ができない
- 規制を作るのは最後でいい。 我々はまだソーシャルメディアを5000日強しか使っていないにも関わらず悪いところをほじくり出して法律を作ろうとしている
筆者は新技術に早期に規制がかかることについて、発展を阻害するとして反対の立場です
全ての産業はテクノロジーで生まれ変わる
- クリーンミートに代表されるバイオテック産業に投資マネーが集まる
- 農場は AI とロボットが活躍する場となる
- 自動運転が主流になるのは2040年以降。 最大の障壁は自動運転車と人間のドライバーを混在させるということ
- スマートシティの実現性については、自分たちのデータ、プライバシー取扱がネック。社会インフラや社会倫理・習慣に関する問題の方が、技術的な実行可能性よりも重大になる
- 空飛ぶ車は騒音や航空規制の問題により最初は通勤などごく限られた用途にしか使われないであろう。その状態は30年以上続くであろう
- お金の未来については個人が銀行と同じことをできるようになり、銀行の昨日の仮想化が進んでいく
- 利用者同士(ピアツーピア)の金融システムの可能性は十分ある
ブロックチェーンはすごい発明だと思いますが、それは配管みたいなものなんです。必要なテクノロジーですが目立たず、トイレは生活を便利にするのに欠かせないがその配管自体は地味なのと同じです。ほとんどのブロックチェーンは見えないものになり、背景に隠れてしまいます。それはオフィスで使われる表計算ソフトのようなもので、仕事には大切なものですが、一度使い方がわかったらもうその存在を気にしません。ブロックチェーンも同じような存在で、取引などにとって非常に大切なものですが、後ろにいて世界を変えるのを手伝っているだけです。
『500日後の世界』(p108)
著者は暗号資産としてのブロックチェーンについて、通貨というよりも投機の対象と見ており、まだ懐疑的ですね。
- 実名での取引しか不可能な「国家による暗号通貨」ができる。
- エネルギーの未来において立つ炭素の鍵は電気への転換
- 今後5年で電気自動車は爆発的に普及する
- 教育の未来においては動画と AR ・ VR 技術を組み合わせた学習用メディアによって教育を激変させる
- 自分で学習用コンテンツを作り、それをシェアするということが容易にできる
- AR、VRによる没入感は学習効果を強める
- オンラインでの教育に大きな可能性があるとはいえ 、リアルな大学はなくならない
- 大学に限らず高校でも学習はプロジェクトを立てて学生同士がその課題を一緒に学ぶという形式になる
アジアの世紀が到来する。
- 中国とインドが世界を左右する2大プレイヤーになる
- 中国とインドの人口を合わせると約28億人、この2カ国で世界人口の1/3以上であり、エネルギー問題や公害、二酸化炭素排出、温暖化、気候変動にどう対処するかはアメリカより大きな影響を世界に与える
- アジアに共通する西洋との一番重要な違いはプライバシーに対する考え方
- 日本などの東アジアは個人主義よりも社会契約を重視する文化がある。一方でアメリカ人は、自己中心的な傾向
- 長期的には、現在の深圳で起きているようなある種の産業に特化した都市のクラスターができていく
- 結果、都市が国家よりも力を持つ時代が来る
テクノロジーの声を聞く方法
- テクノロジーは人間と関係なくわが道を行くものと考えている。その様子を確かめるためそれが非公式にどのように使われるかを観察する
- テクノロジーが若者や犯罪者によって街中で乱用されている様子を見る
- 発明者の意図とは違った使われ方をしている場面を見ることでテクノロジーが持つ自然の方向性がよく見える
- 不確実性が増す世界では小学校から高校までの12年間の教育で「学び方を学ぶ」という汎用のスキルを持つ必要がある
- 学校の教育は専門的でなく出来る限り広いものを対象としジェネラリストを育てるべきである
- ジェネラリストとして一般的な広い分野の施行に少しでも足がかりを持っていれば、予期しないものを受け入れ受け入れることができる
ジェネラリストを育てろ、というのは昨今の教育論からは逆に聞こえますが、広い教養の素地が大事、という意味と知ると納得ですね。
- 未来をつくるのは楽観主義者
- 過去200年の歴史が世界は良くなっていることを教えてくれる
これからの5000日は、今までの5000日よりもっと大きな変化が起きる
- インターネットが使われ始めて約5000日が経った頃ソーシャルメディアがよちよち歩きを始めた
- 現在はソーシャルメディアが歩き始めてから約5000日が経ったところ
- これから起こる変化は物理的な変化ではなくほとんどは精神的なもの、目に見えない
- より多くの良いテクノロジーを増やすということで選択の幅を増やす
本書を読み終えての感想
テクノロジーの最前線に長く身を置いている筆者が、次の技術としてARをプッシュしており、これが主流なのだろうなと感じました。
VRメタバースはAR拡張現実であるミラーワールドの一部、デジタルツインという位置付けで理解しました。
また様々な最新技術について社会実装の時期の目処についての予想がとても参考になりました。
自動運転の社会実装は、規制の障壁が高くてまだまだ時間がかかりそうだぞ、、とか。
また汎用AIは存在しえない、今後も特化型AIという明確な立場も、説得力があります。
総じて、未来に向けてのデジタル技術の進展を網羅できる点、またテクノロジーの声に耳を傾ける、という思考方法を垣間見ることができる点で良い書籍でした。
未来の主要なテクノロジーについて、分野を跨いで把握したい方におすすめです。
興味を持たれた方はぜひ。
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