【テクノロジー×高齢者×介護】『落合陽一 34歳、「老い」と向き合う』を読んだ感想/要約/書評【介護を日本の成長産業に】

みなさん、こんにちは。
今日は落合陽一(著)『落合陽一 34歳、「老い」と向き合う』を読んだ感想についてご紹介します。
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この記事の目次
本書をざっくり紹介すると
研究者であり大学教員でありメディアアーティストであり経営者であり3児の父であり、といくつもの顔を持つ多忙極める著者が、テクノロジーの専門家としての視座から「老い」「介護」「少子高齢化」について論じたもの。
日本の少子高齢化問題を「衰退」と捉えず、世界に先駆けて、テクノロジーで介護の「のびしろ」にビジネスチャンスを創出する、という意欲作。
著者が提唱する「デジタルネイチャー」へと現代社会が近づいていく中においては、「老い」のあり方についても再定義が必要なのでは、と試論を展開しています。
著者曰く“専門外のことを学びながら書き進める、チャレンジングな本”とのことでしたが、自身の研究やビジネス側面から触れた、介護領域の手触り感ある生の視点が多分に含まれていて、強い説得力を持った一冊となっています。
「デジタルネイチャー」については本書冒頭で著者による簡単な解説もありますが、より深く知りたい方は↓こちらの2冊↓をぜひ。
本書に書いてあること
養老孟司氏との対談
『バカの壁』の著者、解剖学者の養老孟司先生との対談です!
- デジタル技術によってディティールが見えるようになった
- 死を「一人称の死」「二人称の死」「三人称の死」に区別するようになった
- 三人称の死は「1秒間の死者1.7名」といった表現をするデータの世界
- 医師は患者の死をデータの集積、三人称の死と捉える。そうしないと気持ちがもたない
- 情報禍の自然の中において、これまでの親と子の関係の中にデータというレイヤーが1枚挟まることで、これまでの子育てという自然の在り方が変わる
- 元来の「自然像」が根本から揺らいでいる
- 生活から「死」が切り離され、死が特別視されすぎた結果、老いにマイナスイメージがついている
- 成熟という言葉が意味を持たなくなってきている
- 介護は極めて「二人称」的
- 生死の問題、人生の問題には一般論がない事を皆が理解すべき。常に程度問題。
発展するテクノロジーと変わる「老い」
- 介護とは「身体の補完」「身体の拡張」である。例えばメガネ、補聴器などもこれに相当する。サイボーグを目指すわけではない
- 障がいという言葉を使わず、「身体の多様性(ダイバーシティ)」ととらえる
- 障がいと呼ばれている特徴は、個人を表現するパラメータの一緒になっていく
- 身体の多様性を許容する社会を実現するためには、「包摂(インクルーシブ)」が必要である
- 「多様性がある」で立ち止まってしまうダイバーシティから、より一歩進んだ「多様性を受け入れる」というインクルーシブ社会となることで、身体の多様性を個々人が望んだ形で乗り越えられるようになる
- 画一的な介護プロダクトには限界がある
- 階段を昇り降りすることが困難な人と歩くこと自体が困難な人では必要とするサポートは異なる
- 聴覚が弱い人でも後ろから迫ってくる車の音を察知したい時とコンサートを楽しみたい時では製品に求める性能は違ってくる
- コンピューターを専門とする著者が介護に注目する理由は、この多様性ある身体と様々なケースにおいて、コンピューター技術でできることが非常に豊かであるため
- 介護職のストレスマネジメントには「一日でも長く生きてもらわなくてはならない」というマインドを持たないようにすることも必要
- 外見上の「老い」はコントロール可能なパラメータに近いものになっていく
- 最後の老け込み、不可避な「老い」以外は、「老い」と切り離された人生を生きるようになる
「まごころ」ケアの困難さ
- 介護職の働き方に関して問題なのは介護を受ける高齢者との関係性
- 一般的に介護職は高齢者と家族のような関係を築くことが望ましいと言われがちであり、この要請こそが介護職の過重労働に繋がっているのではないか
- 病院においては人が亡くなることを病院側も利用者側も理解している
- 介護施設では病院のような、ある種の割り切りが存在しない
- 心的負担を軽減しようと定期的に部署移動すれば、利用者との信頼関係が築けなくなる歪さが課題として存在する
少子高齢化社会の日本が起こす「第4次産業革命」
- 日本が抱える少子高齢化と人口減少という課題は、今後世界各国に時間差で訪れる
- 超高齢社会の「課題先進国」といわれる日本が、先進国が直面している人口減少に伴う産業構造変化を、先んじて解決することができれば、近代社会を「ゲームチェンジ」することが可能
- 少子高齢化と人口減少への対処策の一つにテクノロジーによる労働の「省人化」がある
- 介護産業は「テクノロジーで代替」の先駆となる
- 政府がトップダウンで社会実装を進めるのではなく、ある程度のリスクを民間が引き受ける必要も出てくる
- 「法規制のせいでできなかった」と泣き寝入りする人間を今以上に生み出せるほど、残されている時間は多くない
- 介護の現場は社会に先んじて「省人化」「生涯現役」「身体拡張」といった次世代のキーワードに対するニーズが高く、新しい技術を実験的に実践する土壌が揃っている
- 介護現場における課題の本質的な解決策は、テクノロジーによる介護職者たちの労働の補助・代替と、介護を受けている高齢者の身体の補完・拡張
- 介護は、社会をアップデートするための先駆け的な取り組みを、実際にお金を落とすテストケースとして現場で行うことができる環境
人にとって優しいテクノロジーとは?
- 介護現場で受け入れられる商品・サービスは、利用者やその周りの人を「少し楽にする」シンプルなもの
- その人らしい生活を送るために、違和感のない UI を開発することは、テクノロジーを開発することそのものと同じくらい重要度の高い課題
- 費用対効果のスケールに合ったアプローチの一つとして「ユーザー自身にデバイスや補助具を作ってもらう」というやり方、工夫はあり
- サ高住のような民間ベースの場所がテクノロジーの実験台になることで、介護テクノロジーを開発する民間企業の開発競争が高まる
「テクノ民藝」の時代がやってくる
- ケアインフラに従事する人に求められる精神性は「テクノ民藝性」
- テクノロジーによる課題解決は、今のように一部のエンジニアがトップダウン的に行うのではなく、ローカルに、それぞれの場所で創意工夫されつつ進められるようになる
- 民藝に似た「地産地消のテクノロジー」としての性質が「テクノ民藝性」
- ケアサービスには適切な「 KPI 設定」が必要
- 技術の発達に伴い、スキルは民主化し、「ケアの均質化」と「きめ細かなサービス」は両立する
- マタギドライヴ的な生き方は高齢者こそがフィットしている、クリエイションベースの生き方はかっこいい
本書を読み終えての感想
介護にまつわる最新のテクノロジーの数々は、身体の持つ多様性、また介護や補助が必要とされる場面、機会の数の分だけ、独立して存在するということを認識させられました。
本書は介護を主題に扱ったものですが、改めてビジネスを考えるに際しては、どれだけターゲットのニーズを細分化して捉えることができるかが重要である、ということをと思い知った次第です。
見方があれかもしれませんが、ビジネスの種って本当にあらゆる場面にあるんだな、という感想です
以上、今日は落合陽一(著)『落合陽一 34歳、「老い」と向き合う』についてご紹介しました。
興味を持たれた方は是非、ご一読ください。
それでは。
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