リンダ・グラットン(著)『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025> 』を改めて読んだ感想

みなさん、こんにちは。
先日、リンダ・グラットンの『ワーク・シフト』が、Kindle半額セールになっていました。
一度、図書館で借りて読んだことはあるのですが(2014年だったと記憶)、いつでも読み返せるよう手元に欲しかったので、この際kindleでも良いや、と購入。
改めて本書を読み返してみたところ、本書が示す2025年が目前に近づいてきていることもあり、また当時はもちろん予測できていなかった世界的なコロナパンデミックを経たこともあり、著者の示す未来における仕事に対する姿勢、その内容には感嘆せずにいられませんでした。
著者のリンダグラットンは『ライフ・シフト』の方がベストセラーとなり有名かもしれませんが、個人的にはライフシフトよりもこちらの方をおすすめします。
今日は、今、改めて読見返す本書『ワーク・シフト』の良さについて、簡単に備忘録としてまとめておきたいと思います。
- ワーク・シフトの趣旨をまとめています
- 執筆時点(2011年)に描いた未来2025年が差し迫る中、著者の先見の明に感嘆するとともに、現時点での答え合わせができます
- 執筆時点(2011年)には、もちろん想像できていなかったコロナパンデミックの発生を踏まえて、本書が示す著者の考えに加えて、さらに選択肢としての想像の幅が広がります
リンダ・グラットン(著)『ワーク・シフト 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図<2025> 』を改めて読んだ感想
この記事の目次
未来を形づくる5つの要因と32の現象
本書第1部では、執筆時点(2011年)で著者が考える、2025年の人類の仕事像、仕事観を考える上で前提として置かなければならない「5つの要因」とそれぞれの要因に関連する計「32の現象」について述べられています。
これらを列挙するだけでも、本書の価値が十分に伝わります。
まずはそれらを紹介したいと思います。
■要因1 テクノロジーの進化
現象1 テクノロジーが飛躍的に発展する
現象2 世界の50億人がインターネットで結ばれる
現象3 地球上のいたるところで「クラウド」を利用できるようになる
現象4 生産性が向上し続ける
現象5 「ソーシャルな」参加が活発になる
現象6 知識のデジタル化が進む
現象7 メガ企業とミニ企業家が台頭する
現象8 バーチャル空間で働き、「アバター」を利用することが当たり前になる
顔出しをやめる発言(撤回されましたが)なんかはこれの前触れに感じます
現象9 「人工知能アシスタント」が普及する
現象10 テクノロジーが人間の労働者に取って代わる
このあたりは井上智洋(著)『人工知能と経済の未来』を読むと、深く理解できます。
『人工知能と経済の未来』については過去ブログに書いていますのでこちらをご参照。
↓↓↓
井上智洋(著)『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』を読んだ感想【BIべーシックインカムの必要性がわかる】
■要因2 グローバル化の進展
現象11 24時間・週7日休まないグローバルな世界が出現した
現象12 新興国が台頭した
現象13 中国とインドの経済が目覚ましく成長した
現象14 倹約型イノベーションの道が開けた
現象15 新たな人材輩出大国が登場しつつある
現象16 世界中で都市化が進行する
この点は、コロナパンデミックにより、逆の動きへとシフトするかもしれません。人々は密を避け分散する代わりに、ネットワーク恩恵を受け、場所を選ばずにこれまで以上の仕事にクリエイティビティを発揮する、いわゆる「開疎」の動き。
このあたりは安宅和人(著)『シン・ニホン』を読むのが良いでしょう。こちらも過去記事がありますのでご参考まで。
↓↓↓
安宅和人(著)『シン・ニホン』の感想【読んで納得するための寄り道と副読本】
現象17 バブルの形成と崩壊が繰り返される
現象18 世界のさまざまな地域に貧困層が出現する
これも特筆すべき点です。現在、貧困層は世界のエリア別に語られることがまだ多いですが、今後、世界中が繋がり一本化していくと、場所を問わず例え先進国も含めあらゆる場所で格差が生じ、貧困層が出現していきます。グローバル化であまり語られることのない負の側面であると言えます。
■要因3 人口構成の変化と長寿化
現象19 Y世代の影響力が拡大する
現象20 寿命が長くなる
現象21 ベビーブーム世代の一部が貧しい老後を迎える
現象22 国境を越えた移住が活発になる
■要因4 社会の変化
息子のドミニクがまだ幼かった頃、タンザニアのマサイマラ地区でマサイ族の人たちとしばらく過ごしたことがある。ある日、丘のてっぺんに立って、どこまでも広がる大平原を見下ろしながら、若いマサイの戦士の話を聞いていた。すると突然、おなじみの電子音で会話が中断された。携帯電話の着信音だ。男性がポーチから携帯電話を取り出し、興奮ぎみに話しはじめた。その様子は、携帯電話で話すときに世界中の人々が見せる態度となんの変わりもなかった。電話が終わるのを待って、誰と話していたのかと尋ねてみた。 「弟ですよ」と、男性は答えた。「今朝、ヤギたちを連れて、牧草地を探しに出かけたのです。低木地帯を3時間歩いてようやく新しい牧草地が見つかったと、たったいま連絡してきたところです」 携帯電話という新しい道具が登場し、表面的な部分は変わったかもしれないが、このマサイ族の男性にとっては、何世紀も前の先祖たちと同じように、ヤギのエサが重大な関心事だったのだ。
『ワーク・シフト』(第1部第1章 未来を形づくる5つの要因)
現象23 家族のあり方が変わる
現象24 自分を見つめ直す人が増える
これはコロナパンデミックにより一層加速したと言えるでしょう。
現象25 女性の力が強くなる
現象26 バランス重視の生き方を選ぶ男性が増える
現象27 大企業や政府に対する不信感が強まる
現象28 幸福感が弱まる
現象29 余暇時間が増える
■要因5 エネルギー・環境問題の深刻化
現象30 エネルギー価格が上昇する
現象31 環境上の惨事が原因で住居を追われる人が現れる
現象32 持続可能性を重んじる文化が形成されはじめる
著者はこれらの要素をもとに、2025年に仕事をしている人々の1日を想像しストーリーを描き出す、という方法で未来の予測≒選択肢としての可能性を描き出しています。
その過程については、著者の母親が行っていたパッチワークキルトに擬えて紹介している部分が印象深くもあります。
「漫然と迎える未来」と「主体的に築く未来」を示すストーリー
続く第2部、第3部では上記の5要因32現象について、それぞれが複雑に絡み合い作用し合うと、どのような2025年の人生、仕事の在り方となっているかをストーリー仕立てで紹介しています。
「漫然と迎える未来」の5つのストーリー、「主体的に築く未来」で示す3つのストーリーを読むと、上記の現在の自分自身と必ず重なる部分が発見できます。
著者は提示するストーリーについて、以下の観点で問いを持ち検討すると良いと説きます。
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ストーリーで描かれている現象のなかに、あなた自身の職業生活で現実になりそうな側面はあるだろうか?あるいは、すでに実現している側面はあるだろうか?
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ストーリーのなかに、あなた以外の人たちの未来で現実になりそうな現象はあるだろうか?その現象を突き動かしている要因はなんだろうか?
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ストーリーで描かれている現象は、あなたの生活に、そしてほかの人たちの生活にどのような影響をもたらすだろうか?
提示されるストーリーは、マクロな5要因32現象が、ミクロな個人レベルにどう反映されるかを示したものです。
全てにおいて、一長一短というか、何を自分が大切にし、何に重きを置き、取捨選択の上でのバランスを取るかに尽きる、ということが理解でき、これらは一概に未来予測で括ることのできない、可能性の選択肢なのだということがよくわかります。
3つの資本を切り口に、働き方を<シフト>する
上で述べた5要因32現象に表されるような世界の目まぐるしい変化を受けて、「仕事はこうあるべし」という古い固定観念の多くが過去のものとなり、新たな選択肢とチャンスが生まれる、と著者は説きます。
同時に、一方で、主体的な選択とその結果を受け入れる覚悟も求められる、と。
第2部、第3部で示されたストーリーにあるように、その取捨選択と覚悟の結果次第では、悲惨な未来を生み出す可能性もあれば、明るい未来を生み出す可能性もあります。
その暗い側面を最小限に抑え、明るい未来を最大化するためには、3つの資本、①知的資本、②人間関係資本、③情緒的資本の<シフト>が必要だと述べています。
知的資本の<シフト> ゼネラリストから「連続スペシャリスト」へ
著者は、未来の仕事の世界で成功できるかどうかを左右する要因の一つは、その時代に価値を生み出せる知的資本を築けるかどうかにかかっていて、とりわけ、従来の広く浅い知識や技能を蓄えるゼネラリスト(いわゆる“なんでも屋”)を脱却し、専門技能の連続的習得者への抜本的な<シフト>を遂げる必要がある、と書いています。
- まず、ある技能がほかの技能より高い価値をもつのはどういう場合なのかをよく考える。未来を予測するうえで、この点はきわめて重要なカギを握る。
- 次に、未来の世界で具体的にどういう技能が価値を持つかという予測を立てる。未来を正確に言い当てることは不可能だが、働き方の未来を形づくる5つの要因に関する知識をもとに、根拠のある推測はできるはずだ。
- 未来に価値を持ちそうな技能を念頭に置きつつ、自分の好きなことを職業に選ぶ。
- その分野で専門技能に徹底的に磨きをかける。
- ある分野に習熟した後も、移行と脱皮を繰り返してほかの分野に転進する覚悟をもち続ける。
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その技能が価値を生み出すことが広く理解されていること
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その技能の持ち主が少なく、技能に対する需要が供給を上回っていること
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その技能がほかの人に模倣されにくく、機械によっても代用されにくいこと
著者は、連続スペシャリストがよりグローバル化した未来で成功するためには、同時にセルフマーケティングも欠かせない、といいます。自らの能力を管理、証明し確立することで、新たな一連のキャリア形成がなされていくと予見しています。
人間関係資本の<シフト> 孤独な競争から「協力して起こすイノベーション」へ
著者は、未来の仕事では、現在に比べて人間関係資本を築く方法が飛躍的に拡大することが素晴らしいと謳います。
やる気と野心と強い競争心があれば成功できると考えられてきた従来の価値観を脱却し、高度な専門技能、知的資本を習得した人々が互いにオンラインのコミュニティによる結びつくことで、可能性は無限に広がります。
ここで著者は、「ポッセ(同じ志をもつ仲間)」という概念を提唱しています。ポッセとは”比較的少人数のブレーン集団”という意味であり、以下のような条件を満たす必要があるとしています。
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ポッセは比較的少人数のグループ(15人を上回ることはない)
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声をかければすぐに力になってくれる面々の集まり
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メンバーの専門技能や知識がある程度重なり合っている
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メンバーは互いに一緒に活動した経験があり、信頼し合っている
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充実したポッセを築くためには他の人と協力する技能に磨きを変える必要がある
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バーチャルんば付き合いでもうまくコミュニケーションを取る技能が必要
テクノロジーとグローバル化の進展により、人々の結びつきが強まる反面、個々人は一層時間に追われ孤独を味わうようになる矛盾を著者は危惧します。
この矛盾を回避するためには「ポッセ」をはじめとする「ビッグアイデア・クラウド」「自己再生のコミュニティ」など、強固な人間関係の構築を意識的に努力することこそ、重要な人間関係資本の<シフト>であると結論づけています。
情緒的資本の<シフト> 大量消費から「情熱を傾けられる経験」へ
著者が提唱する3つの<シフト>の中において、この第3のシフトが最も難しいと言います。
つまり、自分の前にある多くの選択肢一つひとつを深く理解し、それぞれの道を選んだ場合の結果を分析し、選択の結果と代償を受け入れる覚悟をもって、行動に踏み切る勇気をもつ必要があるためです。
しかし、これを実践しない限り、自分が望む働き方、自分に相応しい働き方の未来は切り開けない、と言います。
テクノロジーの進化により、企業と個人の古い約束事が綻び、機能しなくなり始め、その結果、多様な価値観とともに幸せの定義が従来とは変わってきています。
従来、仕事の価値は「お金と消費」に置かれていました。
これが未来では、仕事の価値=「経験」に転換する、というのが著者のいう第3の<シフト>です。
著者は、この章の中で何度も、「選択の代償を理解し、覚悟を決めて選択すること」が重要であると訴え、それを実践することが「自分で自分の未来を築く」ことに繋がると呼びかけます。
エピローグ 3つの手紙
最終章エピローグでは、今を生きる①子どもたち、②企業経営者、③政治家に対して、2025年に向けて未来に待ち受けているであろう変化を、手紙という形で伝える、という形式がとられています。
この3つの手紙を読むだけでも、本書の内容が整理されており、また読者がどの立場で手紙を受け取るかで、危機感や使命感、自分に関係する要因や現象の把握ができやすく、初めて読む方はこの章から読むのもおすすめです。
以上、いかがだったでしょうか。
2011年に描かれた2025年の仕事の未来図です。
コロナパンデミックを経て、加速している現象や、大きく舵が切り替わった現象もあり、今(2021年4月)に読み返してみることで、改めて発見や気づきが多いことに驚かされますね。
自分の未来を築くための選択と、それを実践する覚悟を私も改めて胸に持ちたいと思います。
それでは。