【書けない悩みは書くことで解消】千葉雅也/山内朋樹/読書猿/瀬下翔太(著)『ライティングの哲学』を読んだ感想/要約/書評
みなさん、こんにちは。
今日は『ライティングの哲学 書けない悩みのための執筆論』を読んだ感想についてご紹介します。
【書けない悩みは書くことで解消】千葉雅也/山内朋樹/読書猿/瀬下翔太(著)『ライティングの哲学』を読んだ感想/要約/書評
本書をざっくり紹介すると
本書は執筆を生業とする著者4名(※)が、執筆における「書けない」の悩みについて、互いの執筆方法や書けない時の乗り切り方などを綴ったものです。
※著者は以下
・千葉雅也 氏(哲学者)
・山内朋樹 氏(美学者、庭師)
・読書猿 氏(読書家)
・瀬下翔太 氏(編集者、ディレクター)
山内氏がTwitter上で「アウトライナーみんなどうやって使ってます?見せ合って意見交換しませんか」の呼びかけを発端に本書の企画がスタート。
本書の構成は
1.座談会その1(2018年4月)
2.著者4名それぞれの執筆実践パート(2021年2月)
3.座談会その2(2021年3月:zoomによる)
以上の3部構成で進みます。
座談会その1では、各人のアウトライナー等文書作成ツールの使用変遷、その使い方など、テクニック的な話題が盛りだくさんです。
GoogleドキュメントやWordしか知らない無知な私にとっては、そんな世界があるのか、ととても興味が沸きました。
そして時を経て、各人の執筆の仕事にどのような変化があったか「座談会を経てからの書き方の変化」というテーマで8000文字前後の寄稿というお題に各々が向き合います。
執筆に向き合う内情を綴られた執筆パートです。
各人の特色が出ています、締め切りへの向き合い方が面白い!
最後は執筆原稿を互いに読み合った上での、前回の座談会からその後の変化含めた近況報告兼ねての、座談会その2です。
座談会その1よりも、書くために、生み出すためにどうしているか、という実践と執筆への向き合い方に多く触れられています。
総じて、執筆を仕事として携わる人、研究や大学での論文を書かなければならない人、趣味でブログや日記を書いている人、全ての「書けない」と悩んでいる人に向けて、勇気を与えてくれる内容です。
本書に書いてあること(メモ)
座談会その1
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著者4人のアウトライナーツール遍歴、およびバックボーン
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瀬下氏が生まれた1991年、読書猿氏はMachintoshを買って、97年からメルマガスタート
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Twitterの140文字がちょうどいい、アイデア出しに重宝
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Twitterやアウトライナーといったツールの影響で一段落が短くなった、段落革命
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「無能さ」でフィルターをかける
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アウトライナー上でフリーライティングする=仕事しないで仕事する
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仕事に対する構えを消していく
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〆切の現実性による「諦め」で急速に論理が組み上がっていく
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ノンストップ・ライティングが難しい場合でも「フレームド・ノンストップ・ライティング」ならかける、執筆より穴埋めに近くなる
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なぜTwitterにはアイデアを書けるのか、文字数制限だと思っていたが実は取り返しのつかなさ。少人数でも誰かに見られる、という効用。
著者4人による執筆実践パート
【断念の文章術】読書猿氏
- 構成やプランを諦める
- ジャン=ルイ・ド・ランビュール編『作家の仕事部屋』におけるレヴィ=ストロースへのインタビューの紹介
- 文を書くことを諦める、todoリスト、買い物メモなんでも良い
- 資料を見ることを諦める
- 有能な自分を諦める:無能フィルター
- 意思の力を諦める
- 全体を見渡すことを諦め、できる限り良い偶然が生まれるようページ(アイデア)を増やす
- もっと良くすることを諦める
【散文を書く】千葉雅也氏
- 文章はフォーマルに書き始めなくてもよい
- 「ですます」文体は負担が半減する
- フリーライティングで大事なのは凝縮的に書こうとしないこと、ザクザク箇条書きにしていく
- 「書かないで書く」は脱凝縮=散文化
- 音声入力で得たラフな感覚を、手で書くこともできようになった
- 手書きでも音声入力でも冗長性がある
- 音声入力的な意識で書くということは、何らかのナレーションのカタを採用するということ
- フィクショナルな語り手のおかげで責任が減り負担が半減する
- 完成度に対する神経質なこだわりの緩和
- フリーライティングと本番、メモと本文の区別がなくなる、それでOK
【書くことはその中間にある】山内朋樹氏
- キリのなさとどうつきあうか
- Evernoteキャッチコピー「すべてを記憶する」でフィールドノート化
- Evernoteでフィールドワークのあらゆる情報をまとめあげ日誌化し、準原稿とする
- 数日分の日誌がたまると何か書く、「中間的なテクスト」に変換していく
- 中間的なテクストが貯まれば、レヴィ=ストロースのように一気にかきあげる
- 注釈などの神経症的操作はすべて後回し
- ログは自己管理社会におけるブルシットジョブではあるが、そこに記された「作業」「雑感」には一定の重要性
- ログが書けないよどみの中での唯一のコンパス
- その上で継続することを支えているのは身体と習慣
【できない執筆、まとめる原稿ー汚いメモに囲まれて】瀬下翔太氏
- 「執筆」「原稿」には「整然」「雑然」の二つの世界
- 自分のやり方は「執筆」なしで雑然と「原稿」を生成する方法
- 執筆から逃走し、雑然とメモを撒き散らし、それらを寄せ集めて「原稿」をまとめていく試行錯誤
- 執筆をメモに変える最有力の方法はツールを変える
- 生まれたゴミのようなメモの編集作業は大変だが必ず終わりがある、執筆の苦しみに比べればはるかにマシ
- メモには貴賎も重要度の差もない、それぞれに価値がある
座談会その2
- 〆切こそ最高の執筆術
- 原稿は〆切当日に出すものじゃない、1日遅れるくらいが品が良い
- すべてを行きがかりでやっていく、即興で書く
- だらしなさを許す、雑を肯定する
- 最初に出てきたものに真実がある、という一種の信仰
- 一字下げ改行は過剰な意味が与えられているように感じるようになった
- 見出しのカテゴリーレベルが変わることを気にしない
- 「文章を書く」という意識とはまったく違うところで世間の「書く」という行為は行われている
- インテリの世界ではこう振る舞わないとバカにされるっていう規範とどう闘うか、ということ
- 情報量のある文字がたくさんあれば、整理されていなかったとしても必ずまとめられる
- 「書かないで書く」=ゼロから文章を構築するイメージから離れることを目指す
- Twitterすごい、文字列を生産するインターフェイスとして本当に優れている
本書を読み終えての感想
私自身アウトライナーなどの文書作成ツールについては、その存在すらも知らなかったため、とても新鮮に感じます。
本末転倒ですが、ツールへの興味も湧きます。
途中、読書猿さんが紹介していたジャン=ルイ・ド・ランビュール編『作家の仕事部屋』から引用していたレヴィ=ストロースの言葉がとても印象深く残りました。
いつも目に付く場所に掲示しておきたい。
文章作成時の音声入力についても、本書のおかげで試してみようという勢いがつきました。
そして瀬下氏が自身の執筆は「執筆」ではなく、大量の情報からの編集、エディットという考え方は、とても勇気をもらえました。
読めば何かヒントが手に入る、そういった本はやはり最高ですね。
この本を読んだ後は、程よく肩の力を抜いた状態で、気持ち新たにディスプレイやノートに気持ちを向かわせてくれる、そういった良書です。
興味がある方はぜひ。
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